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episode "IGNITE"

episode 03 : 見えてきた小さな光(2025.09.29 upload)

​2021年の暮れ、「Jam9を続けて行くことに意味があるだろうか」という想いがずっと胸の中に渦巻いていました。作曲家の仕事も全く上手く行かず、採用されるのは「平成っぽさのある懐かしい曲」というお題ばかり。メインストリームにいるアーティストの楽曲コンペでは一切通用しない時期も長く続き、それは「Jam9の音楽をもう世の中が必要としていない」という答えなんじゃないかと思うのに充分な要素でした。加えて、Jam9でリリースして行く楽曲も自信とは裏腹に世間の評価は得られず、努力が無意味に思えました。もちろん応援してくれる人が新曲を受け入れてくれていたのを知っているけれど、有難いと感じる反面、それが世間で結果に繋がっていないことを申し訳なくも感じていました。

更にその頃Jam9は「アルゴリズムの壁」にも突き当たっていました。

デジタルリリースの波が加速して行く中、例えば最新のヒット曲と並べてもらえたら、何かが変わっていたかもしれない。でもJam9は「2010年代初頭のアーティストというカテゴリー」に並んでいて、同じカテゴリーで並んでいる他のアーティストはほとんどが解散しているグループ。当時を懐かしみたい人たちに「おすすめ」された2020年代のJam9なんて、簡単には価値を見出してもらえないということも見えてきていました。

過去の全てが自分たちの行く手を阻んでいるような気がしました。

「終わった人たちなのかもね」

冗談交じりにそんな会話を交わしながら、メンバーは全員「置かれている状況の厳しさ」を痛感していました。これが「お店」だったら、名前や看板を変えてメニューも一新して再出発するべきタイミングなんだろうねという会話もありました。実際、アルゴリズムの壁から脱却するためにグループ名を変えるべきなんじゃないのかと真剣に会議することも(カタカナでジャムナインにしようという案が最有力でした)。

そんな折、私の気持ちを楽にしてくれる偶然の出来事が起こります。

浜松駅前で歌う少女との出会いでした。

圧倒的な歌声の才能を持ちながら「プロを目指す気は無いんです/歌うのが好きなだけです」という少女に、何が大切かを思い出させてもらいました。2010年代の自分だったらきっと、プロを目指さず好きに歌いたいだけという若手のシンガーを認めることは無かったと思います。でも2021年末の私は、その言葉にとてつもなく救われました。

そうだ、好きだから今日まで音楽と向き合ってきたんだ。

年齢差20以上の少女をゲストボーカルに迎えて作った「ハレル-feat.neiro-」の歌い出しが、当時の心境を表しています。

「変だな 道に迷った」

迷う事なくまっすぐ音楽と生きていたはずなのに、トレンドから外れてしまったり、そこに追い付こうと足掻いたり、その中で道に迷った自分がいました。でも「晴れますように」と願う気持ちを持って未来に進んだって良いよねという気持ちになれたんだと思います。

そして、いつの間にか晴れ間は少しずつ見えてきました。

「櫻坂46のアルバムリード曲に採用が決まりました(櫻坂46/摩擦係数)」

全く通用しなくなってしまっていた作家仕事で久しぶりのメイン採用。苦しみながら学んできたトレンドを落とし込んで作ったメロディーやラップを、秋元康さんが勝負曲に選んでくれたという事実が私たちを大きく勇気づけました。

加えてそれから1ヶ月も経たない頃「King & Princeから採用の連絡がありました(King & prince/彩り)」というメールが入ったことで、状況は一変。無意味かもしれないと思いながらも新しい時代の音楽を学び続けたことが、無駄では無かったとメンバー全員が信じられるようになりました。

​本当に苦しかったです。何が正しいことなのか分からないまま走る怖さも、無意味なんじゃないのかと感じることで努力を迫られる不条理も、結果が出ない中で胸を張らなきゃいけない虚しさも、きっと一生忘れないと思います。

まだ時はコロナ禍。

​僅かに見えてきた光を頼りに、Jam9は「結成20周年」の節目に向かって行きました。

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